ミッチ・ジョンソンが2016年にサンアントニオ・スパーズへ加わって以降、初めて記者会見の壇上に立ったのは、ミネソタ・ティンバーウルブズに10点差で勝利した夜でした。
しかし、その夜は勝利そのものよりも、ジョンソンが壇上に座っている事実の方が大きな意味を持っていました。
2024-25シーズン開幕から最初の5試合を指揮したグレッグ・ポポビッチは、試合前のウォームアップ中にトンネル内で脳卒中を発症しました。
当時、ジョンソンはそのことを知りませんでした。
「誰もが、次の選手や次の人のために常に準備しておかないといけない。体調を崩すこともあるし、具合が悪いこともある。人生ではいろんなことが起きる。今は、彼の体調がよくないだけだ」
その後に起きた数か月間の出来事が、ジョンソンをポポビッチの後任へ導きました。
ジョンソンにとってポポビッチは、最も大きな恩師の一人です。殿堂入りコーチの不在は一時的なものから、期限のないものへ、そして恒久的なものへと変わっていきました。
2年後の現在、2人はビクトリー・キャピタル・パフォーマンス・センターでそれぞれの場所にいます。
ポポビッチはベンチに、ジョンソンはコートの中心にいます。
今では、ジムにいる誰もその光景に驚きません。特にジョンソンに対しては、もはや誰も驚かないのです。
過去から学び、未来のスパーズを築くジョンソンHC
レギュラーシーズンを62勝20敗で終え、NBAファイナル第5戦でニューヨーク・ニックスに敗れたスパーズは、優勝を目指してジョンソンHCの2度目のフルシーズンに入ります。
昨季と違い、スパーズにはもう意外性がありません。
長年にわたり成功してきた組織の中で、自身の文化を築く方法を探り続けるジョンソンHCは、その重みを誰よりも感じているのかもしれません。
ポポビッチと、1979年に地元シアトル・スーパーソニックスでNBAファイナルを制した父ジョンの存在を通じて、ジョンソンHCは多くの成功を見てきました。
39歳のジョンソンHCは、過去を頼りにすることと未来を受け入れることのバランスを重視しています。
それが常に結果につながるとは限りません。しかし、スパーズが2年連続で22勝しかできなかった時代も知っているからこそ、相手チームから標的にされる立場を好みます。
その方が、はるかに良いと学んだからです。
ジョンソンHCは、期待、学び、初めてヘッドコーチを務めた昨季について、次のように語りました。
「人にはそれぞれのやり方やプロセスがある。でも、聞いて、学んで、ほかの人を見ていくこと以上に、成長を続けるためのいい方法はない。
使えないものもあるかもしれないけど、いくつかでも宝物を見つけられれば、大きな影響を与えてくれる。
このリーグでは、高い期待を持たれる方を選ぶよ。
初めてヘッドコーチをやって、初めてのトレーニングキャンプを経験すると、考えすぎることも多い。『もしこうなったら?』とか、『あれでよかったのか?』とか、何度も考えてしまう。
ある意味、頭が真っ白になっていた。
このリーグの終わりがなくて容赦のない流れに、ただ乗っていくしかない。もっと良くしたいこと、僕自身がもっと良くしなきゃいけないことはたくさんあった。その時は、たぶん気づいていなかった。
全然、心地よくなんてないよ。
でも、1年を通して経験すると、何が待っているかについて少しは分かるようになる。新しいワクワクもあるし、分からないことも出てくる。
僕たちは本当に恵まれている。すごくダイナミックなロスターだから、パズルのピースをどう使うか、どう完成させるかについて、いろいろな工夫ができる」
今夏、ジョンソンHCは地元シアトルへ帰りました。
過酷な春を過ごした後、育った場所で過ごす機会を得るため、あるいは単に涼しい気候を楽しむための帰省でした。
「シアトルにいるには最高の時期だった。本当に楽しかったよ」
静かに振り返る時間を持つ一方で、ジョンソンHCは自分自身を成長させる機会も作りました。
会ったのは、39歳でスーパーボウル優勝を果たしたシアトル・シーホークスのマイク・マクドナルドHCです。
マクドナルドHCは、NFLでコーチとしてキャリアを積み上げた後、シアトル・シーホークスのトップに就任しました。
そしてジョンソンHCと同じように、伝説的な指揮官の後任を担った人物でもあります。
ジョンソンHCはブライアン・ライトとともにマクドナルドHCのオフィスを訪問しました。
そこで2人はビクター・ウェンバンヤマについて話し、リーダーシップを発揮する上での悩みを共有しました。
マクドナルドHCは、バージニア・メイソン・アスレチック・センターで恒例となっている「カルチャー・デー」についてもジョンソンHCに紹介しています。
2シーズンで優勝したマクドナルドHCは、ジョンソンHCが目指す姿でもあります。
「個人的には、いくつかの意味ですごく貴重な経験だった。リチャード・シャーマンとは同じ学校に通っていたし、スティーブ・キャロルHCも素晴らしかった。シーホークスは長い間、あのリーグの模範的な組織だった。舞台裏を少し見られたのは、本当に面白かったよ」
ジョンソンHCにとって最も大きな課題は、開幕戦で誰を先発5人に選ぶのか、そしてプレーオフでより経験豊富なチームと戦うために、どれだけ柔軟なローテーションを組めるかです。
ただし、優勝を目指してNBAファイナルへ再び進みたいチームにとって、その2つは悩みであると同時に、恵まれた課題でもあります。
ジョンソンHCが描く理想の完成形は、ウェンバンヤマがラリー・オブライエン・トロフィーを掲げ、その周囲を自身とスパーズのロッカールームが囲む姿です。
2年前には、それはただの願望にすぎなかったかもしれません。
選手たちが感じるジョンソンHCの成長
ケルドン・ジョンソンは、ジョンソンHCのリーダーシップについて次のように語っています。
「彼は本当に素晴らしい。彼が僕たちのリーダーだって、すぐに分かる。
強いリーダーが必要なんだ。成功するチームにはそれが欠かせない。彼は僕たちにとって、まさにそういう存在だと思う」
ウェンバンヤマは22歳ながら、過去を大切にする一面があります。
ルーキーシーズンには、ポポビッチが試合中にまだサイドラインを歩いていたこと、そして試合前のジョンソンHCの役割が、自分をウォームアップさせることだけだった時代を覚えています。
その思い出を振り返ると、ウェンバンヤマは笑みを浮かべずにはいられませんでした。
「時々、あの頃が恋しくなる。今も毎日会っているけど、もう僕たちと一緒に最前線で戦っているわけじゃないからね(笑)。あの頃は良かった。
ミッチがヘッドコーチになってからの成長は、本当に早かったと思う。最初は予想外だった。いや、ある程度は予想していたのかもしれないけど。それでも、彼はすごくうまく適応した」
ウェンバンヤマは、20勝より60勝する方が望ましいことを当然理解しています。
ポポビッチと今も施設内で会えるため、変化を受け入れられるようになりました。そして、チームを率いるジョンソンHCの変化は良いものだと感じています。
デビン・ヴァセルも、ジョンソンHCの変化に気づいている一人です。
ヴァセルが気に入っているのは、ジョンソンHCが「優しい役」を担う別のコーチを必要としない点です。
「ポップはポップだから、ものすごく怒る時もあるよね。ミッチは全体を少し落ち着かせてくれる。必要なことを少しずつ伝えてくれる感じだ。ポップが質問に答えなかった時には、ミッチが理解できるように助けてくれたこともあった。
昨季、彼は自分の声を見つけて、このチームのリーダーになった。僕たち全員に、やるべきことへの責任を持たせてくれた。本当に素晴らしい仕事をしていると思う」
アシスタントコーチだった頃のジョンソンHCは、常に言葉を求められる立場ではありませんでした。
しかし今は、最初に頼られる存在です。必要な場面で、より頻繁に答えを出さなければなりません。
かつては低い声に驚かれたジョンソンHCですが、今では誰も驚きません。
その声は、スパーズを率いるリーダーの声として、チームに浸透しています。
引用元:SI.com
引用画像:San Antonio Spurs Photo Galleries
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